「誰でもが太陽であり得る」――作家・島崎藤村
2022/04/25
名字の言 「誰でもが太陽であり得る」――作家・島崎藤村 2022年4月25日
作家の島崎藤村は由緒ある旧家に生まれたが、その後、家は没落。
子ども時分から親元を離れて暮らし、太陽を仰ぐこともない陰鬱な青年時代を送ったという。
だがある時、彼は“自分の胸中にも太陽は昇るのだ”と、心の向きが逆転する。
そして確信した。
「誰でもが太陽であり得る。わたしたちの急務はただただ眼の前の太陽を追いかけることではなくて、自分等の内部に高く太陽を掲げることだ」(『藤村全集』筑摩書房、現代表記に改めた)
ある男子高等部員が未来部担当者に悩みを打ち明けた。
「面白おかしく遊べる友達はいるけど、いつも彼らの方がまぶしく見えてしまうんです」。
担当者は自分に自信が持てない彼を思いやりつつ、言った。
「そうか。ならばまず、『本当の自分』を築こう」。
これまで彼は“周囲に自分がどう映っているか”を気にしてばかりいた。
自身を真正面から見つめることを避けてきた。
担当者の一言は、その弱い気持ちを打ち破るきっかけになった。
彼は後年、働きながら大学二部で学び、現在は大学教員として活躍する。
“誰かに光を当ててもらわないと輝けない”という弱気では未来は開けない。
自身が太陽に!――これが「本当の自分」をつくることに結実する。(白)